少し寒い地方には、よく「氷室」という地名を見出すことができます。この辺りでは、亀岡市の隣の八木町に氷室と同じ意味の氷所という所があり、そこには氷室神社が祭られています。また、奈良市には、東大寺の大仏殿の近くに氷室神社があります。この神社は、全国の氷の神様の総元締めとして、毎年氷に感謝する大きなお祭りが執り行われています。


実は、この氷室という地名が東能勢にもあるのです。場所は、切畑口の交差点から国道を少し北へ向かった西川さんのコンビニから余野川を隔てて向い側の谷の奥の方です。ここの地名を氷室といいます。ごく狭い範囲ですが、狭いだけにここに氷室があったと場所が特定できるわけです。


では、氷室とは一体何をする場所だったのでしょうか。まだ、人類が電気を手にすることができなかった時代、夏に冷たい氷を食べることは大変贅沢な夢でした。この夢をかなえるために、冬の寒い間、池に張った氷をせっせせっせと集めて貯蔵し、これを夏(水無月)に取り出して食べるというものです。この氷を貯蔵しておく場所が氷室です。この氷室については、日本書紀にも書かれているので、大和時代にはすでに氷室で氷が貯蔵されていたということになります。この氷一つの大きさは決められていて1個16kgの大きさだったといいます。しかし、この氷を夏に食べられる人は限られていて、一般の人は口にすることができませんでした。そこで、庶民はウイロを氷に見立てて、その上に小豆を乗せて食べたのです。これが、今の水無月(みなづき)といわれるお菓子です。


さて、東能勢でも氷を夏まで貯蔵しておくことができたのでしょうか。これはなかなか難しい問題ですが、1月の東能勢の平均気温は1℃で、地図帳で調べると大体仙台の1月の平均気温と同じです。誰かこの冬に氷作りに挑戦して夏まで貯蔵実験してみませんか。