東能勢には多くの石仏が彫られていますが、ちょっと変わった言い伝えのある石仏があります。それも同じような伝説が2箇所にもあります。ひょっとしたら、その伝説には何か秘められたことが隠されているのではないかと思い、ついつい調べたくなってきます。


その伝説というのは、「昔、切畑(川尻)に影引きの松といわれる松があり、何でもこの松より強い光が出ていて四方を照らし、摂津の海では、この光のために魚(イワシ)が捕れなくなったというのです。そこで、漁師さんたちがこの光を放っている場所を探し求めたところ、切畑(川尻)の大きな松の根元に石の仏様があって、そこから光りが放たれていたというのです。そこで早速、村の人たちに話をして、お祈りをしたところ、仏様は松の影に隠れて光が収まり、再び摂津の海では魚(イワシ) が捕れるようになったということです。それ以来、この松を「影引きの松」と呼び、そこにあった仏様を「イワシミズのお地蔵(観音)さん」と呼ぶようになったというのです。松は、もう枯れてしまってありませんが、石仏の方は、切畑ではイワシミズのお地蔵さん、川尻ではイワシミズの観音さんとして、今も土地の人たちに大切にされています。


では、一体このイワシミズというのはどういう意でしょうか。単にイワシが捕れなくなったので「イワシ見ず」となったのでしょうか。それとも近くに清い岩清水が湧いていたのでつけられたのでしょうか。それよりもむしろ、東能勢がこの当時、京都の岩清水八幡宮の荘園となっていたので、この荘園主の岩清水八幡宮を敬うため、意図的にこのような話が作られたのではないかと解釈することもできます。いずれにしても山と海の交流があったようです。