余野川が木代川と合流する少し手前に、今も青い水を満々とたたえた大きな淵があります。近くに住む年配の人たちは、今もここを牛取淵と呼んでいます。


東能勢村史を開いてみると、昔この淵で牛を水浴びさせようとして、お百姓が牛を川へ入れたところ、牛はあっという間にこの淵に飲み込まれて沈んでしまい、浮いてきませんでした。それから、何日か後になって、下流から白骨となって浮かび上がったというのです。それ以来、この淵を牛取淵と呼ぶようになったということです。まるで昔話に出てくるようなお話ですが、余野川は昔から暴れ川として有名で、何回も東能勢に大水害を起こしています。

この辺りも、今はもう川尻側の山だけが迫っているだけで、それほど難所には見えませんが、当時は東能勢中学校の建っている場所や、道を隔てて住宅地になっている所は大きな山だったので、今では想像もつかないような難所だったと考えられます。多分この話に近いような出来事が実際にあったのではないでしょうか。

先日ここへ写真を撮りにいったとき、コゴミ(クサソテツ)というシダが群生しているのを見つけました。大阪では非常に珍しい植物です。信州等北の地方では、春の山菜としてこの若い芽は珍重されており、旅行などに行けば必ず出される山菜です。
このように、東能勢をちょっと歩いてみると、もう日本からなくなりつつある貴重な自然が至るところに残されていることに気づきます。